相続や名義のこと
2024/7/7
認知症の親の不動産を売却
不動産の売却には「所有者」の意思が必要
基本的に、実の子であっても親の不動産を売却することはできません。不動産を売却するには、『所有者本人の意思』が必要だからです。子が親の代理人となって不動産を売ることは出来ますが、その際も委任状をもって親(所有者)の意思を示さなければなりません。
認知症を発症した親の家が売れない?【成年後見制度の利用】
不動産取引において『所有者の意思』というのは、非常に重要な意味があります。「親が自宅を売りたいといっている」ということを子がいくら主張しても、それが証明できなければ親の自宅を売ることは出来ません。もし、所有者である親が認知症などを発症し、意思を示す能力が損なわれていると判断されれば、たとえ売買契約を結んでも無効になってしまいます。そして、意思を示す能力がなければ委任状をもって代理人に委任することもできません。
厚生労働省によれば、65歳以上の4人に1人は認知症又は軽度認知障害を発症しています。認知症になると、不動産だけでなく預貯金などの資産が全て凍結する恐れもあります。金融機関も本人の資産を守るため、たとえ子であっても、当事者に代わって預金の引き出しや口座を解約することを認めません。
では、所有者本人がもし認知症を発症したら、どうやって不動産を売却すれば良いのでしょうか。
方法の1つとして、『成年後見制度』を利用することがあります。『成年後見制度』を利用することで認知症を発症した所有者本人に代わり、後見人が不動産を売却したり預貯金を引き出したりすることができます。しかし、認知症発症後に後見人を選定する場合は、家族ではない第三者が後見人になることもあります(司法書士など)。また、後見人の役割は、被後見人の財産を管理することであるため、被後見人にとって重要な財産である不動産の売却には、『家庭裁判所の許可が必要』です。
日頃から親の意思を確認する
親が介護施設に入ったり、認知症疑いが見られたりしたとき、スムーズに実家を売却する為には、日ごろから親の意思や体調の変化を確認しておくことが大切です。
- 介護施設に入ったら家を売却するのか。
- 認知症を発症したらどうするのか。誰を後見人にするのか。
- 介護費用をどのように捻出するのか。
このようなことは、なかなか親に聞きづらいものです。しかし、親や自分たちの将来を考えるためには、とても大事なことです。親も出来る限り子供たちに負担をかけさせてくないと考えているものです。「どうするの?」ではなく「どうしたい?」と、親の意向・希望を聞く気持ちで話を切り出し聞いていくことが大事です。また、親が元気なうちであれば、事前に後見人を選定できる『任意後見制度』を選択することもできます。
まとめ
たとえ子であっても、親(所有者)の意思が確認できなければ不動産を売却することはできません。そのため、親が元気なうちに家族で将来のことを話しておくのはとても重要です。認知症を発症し、自分の意思を示す能力が無くなる前に親の意思を確認しておきましょう。